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乙武洋匡オフィシャルサイトより

2010.09.04
武田双雲×乙武洋匡『教育対談』 on Twitter②

Twitter上で行われた書道家・武田双雲さんとの教育対談。
それでは、2日目スタート~♪
双雲:おはようございます。今日もよろしくお願いします(^O^) 
早速ですが、乙武さんが感じる今の学校の問題点はどこですか?
乙武:過剰な「温室栽培」となってしまっている点ですかね。わずかな傷さえつけることを恐れて、何重にもビニルハウスで囲ってしまっている。だから、子どもたちは自分の欠点や短所に気づく機会を奪われているように思うんです。たとえば、バレンタインデー。学校に(その日だけでも)チョコを持ってきてはいけない理由を聞くと、「もらえない子が傷つくから」。でも、僕はそうした傷って必要だと思うんです。「あ、俺ってモテないんだ」と気づき、「じゃあ、モテるためには…」と自分を磨く。
双雲:なるほど。
乙武:運動会でもそうですよ。同じようなタイムの子をならべ、あまり差がつかないように配慮する。足の遅い子が傷つかないように、と。それから、教師は子どもたちに「お父さん、お母さん」ではなく、「おうちの人」と言うように指導を受ける。これは、「片親しかいない子どもが傷つかないように」という理由からです。
双雲:僕の教室でも、字がうまく書けなくて悔しくて泣く子がたまにいますが、その後、必ず飛躍します。弱さと向き合えた子は強くなっていくのを目の当たりにしてきました。弱さと強味をしっかり伝えるのも先生の醍醐味かと。
乙武:挫折から得られるものは、決して小さくないですね。まわりの大人は、その子が挫折でぽっきりと折れてしまわないようフォローしてあげること、そして、その挫折からの学びがなるべく大きなものとなるような示唆を与えてあげることが重要な役割なのかなと。
双雲:小さな挫折と小さな成功をいっぱい体験させる環境づくりも大切なことかもしれませんね。

乙武:だけど、学校は少しでも傷を与えることに憶病になっている。その結果、必要以上の温室栽培に。でも、社会に出たら、そんな「ビニルハウス」ないでしょう。他人との差をイヤというほど感じながら、ありのままの自分で勝負していくしかない。その「ありのままの自分」がどんな人間なのかを知るためにも、ある程度の傷は必要ではないかと思うんです。

双雲:僕の生徒さんのなかにも、不登校や障害を抱えた子供たちと日々向き合っている先生いますが、そういう子たちはいやがおうにも普通の子と比べられてるから、逆に傷に強い子が多いと感じているそうです。

乙武:なるほど、興味深い…。でもね、学校側の姿勢もわかるんです。いまは、わずかな傷にも過剰な反応を示す保護者がいて、学校を飛び越えて、じかに教育委員会などへクレームを入れられる。一度、そうなってしまうと、「再発防止のために」と何度も会議を重ね、レポートを書かなければならない。そうなれば、子どもと向き合う時間がさらに奪われてしまうから、結局は「クレームの対象」となりそうな要素は、できるかぎり排除しておこうとなる。学校が「無難に、無難に」と志向してしまう背景には、こうした事情があるんです。

双雲:では、極度の温室栽培から抜け出すために、今日から誰が、何をしていけばいいのでしょうか。

乙武: 「温室栽培」から脱却するため、僕はまず保護者との信頼関係を築くことに努めました。小渕元首相の「ブッチホン」ではないけれど、よく電話をかけるようにしたんです。担任からの電話は、ふつう何かトラブルが起こったときにかかってくるものだけど、僕は子どもの頑張りを伝えたくて、しょっちゅう電話をかけていました。

双雲:小学校の先生をされている僕の生徒さんが、「PTAと教育委員会への対応が大変だ」と歎いてましたが、乙武さんは、そのPTAにあえて電話を?

乙武:「○○ちゃん、今日ずっと苦手な逆上がりの練習をしていたんですよ」とか、「○○君、今日は△△委員に立候補してくれたんです」とか――結局、逆上がりができなくてもいいんです。委員がほかの子に決まってしまってもいいんです。僕は結果だけでなく、その子の頑張りや意識の変化を伝えたかった。結果だけなら、通知表で十分ですから。

双雲:乙武先生、すごい行動力!保護者の方々の反応はどうでした?

乙武:保護者のみなさんは、最初のうちはさすがに戸惑っていました。「本当はうちの子が何かしたんでしょう?」と信じてくれなかったり……(笑)。でも、僕が本当に頑張りを伝えるためだけに電話しているのだとわかると、とてもよろこんでくださるようになった。そして、僕は電話を切るとき、最後には必ずこう言うようにしていたんです。「いっぱい褒めてあげてください」って。

双雲:それはステキな言葉ですね。

乙武:こうして信頼関係を築いておくと、いざ僕が「従来の手法とは異なる指導」をしても保護者のみなさんは信じてくださるんです。「あの先生なら、きっと子どもたちのためを思っての指導なのだろう」と。信頼関係がないまま、他の先生とはちがう、“変わったこと”をすれば、やっぱり保護者だって不安に思うはず。

双雲:教育に近道はないのですね。

乙武:学校に疑心暗鬼な一部の保護者。その保護者の声に脅えて、硬直化してしまった学校。状況は、決してかんたんじゃない。そんなのわかっているけど、あきらめてタメ息ついてるより、僕は少しでも前に進みたかった。保護者への「OTOフォン」は、そんな想いから始めたことでした。

双雲:1つ1つやれることを精一杯やっていく。素晴らしいですね。ただ、多くの先生が一生懸命やっていても空回りしてしまう場合も多いと聞きます。 何かそういった先生に伝えてあげられる言葉があるとしたら何でしょう。コツというか。

乙武:たった3年しか経験していない僕が先生方にアドバイスなんておこがましいけれど、あえて言うなれば、教育界ではない人と積極的に交流を図ること、かなあ。狭い世界に閉じこもっても、何もいいことはないから。

双雲:なるほど。では、乙武さんの教育現場での失敗談を教えて下さい。ちなみに僕は失敗しまくり。

乙武:音楽の先生が出張でいないのに、それ忘れてて子どもたちを音楽室に送り出しちゃったとか、そんなレベルの話ならいくらでもありますけどね(笑)。でも、双雲さんのご質問の意図はそういうことじゃなく、もっと本質的なことですよね…。

双雲:フォロワーのみなさんから、綺麗事とか薄っぺらいと言われないような展開にしましょう(笑)

乙武:僕のクラスに、何度注意しても同じ失敗を繰り返す子がいて、そのたびにきつく叱っていたんです。でも、あとになってわかったことだけど、その子は認知の仕方が特徴的で、他の子と同じように伝えても、理解がむずかしかった。それを知ったときは、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました……。

双雲:乙武さんは、そういうお子さんにどう対応されたのですか?

乙武:経験豊富な養護教諭(保健の先生)のアドバイスに基づき、「聞いたらすぐメモに取る」など、いままでとは異なるいくつか方法をその子に提案しました。数ヵ月後、その子は劇的に伸びていきました。

双雲:それはすごい!あ、そろそろ夜も更けてきましたね。ここで一旦、対談を終了しましょうか。

乙武:そうですね。今日も双雲さん、みなさんと有意義な議論ができたことに深く感謝しています。僕は担任として、23通りの個性、23通りの家庭環境しか知ることができなかったけれど、みなさんが「うちは~です」とお話しくださり、たいへん勉強になりました。

双雲:本当にその通りですね。忌憚ないご意見をくださったみなさんに深く感謝致します。

乙武:また、僕や双雲さんのツイートに対して反論くださったり、「わかってない」などとご意見くださった方も多数いらっしゃいましたが、それも当然のこと。とくに「正解」がない教育問題では、多くの人が意見をぶつけ合い、建設的に解決への道を探っていくのが大事なことと思っています。だからこそ、異論・反論のツイートにも深謝。

双雲:そう、僕らはまだまだ固い。もっと柔らかくなるよう成長していかなければ。

乙武:その意味でも、こうしてみなさんと議論するきっかけを与えてくださった双雲さんには深く感謝しています。僕らの対談が、みなさんの教育についての関心を深めるきっかけとなったら、これ以上なくうれしく思います。本当にありがとうございました!

双雲:貴重な体験を熱く語ってくれた乙武さん、ありがとうございました。いつかまた!

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